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食堂 寿来

はじめての那覇へ到着した夜、一人国際通りの三越裏の店へ足を運んだ。

店に入って込み合うカウンター席の向こうにいる男と目を合わせ、僕は帽子を取った。

目の前の男はこざっぱりと短めの髪を無造作に跳ねさせ…無精ひげをはやしていた。

「go君?」
少し戸惑っている僕。記憶の中でのゴウ君は髪を後で結っていたのが印象的だった。

「fujii」

連絡無しに飛び込んだ僕を彼はすぐに判ったようだ。
最後に会ったのは南青山。
一緒に働いていた渋谷道玄坂の店で仕事をはねた後、翌日には二度目の印度へ旅立つという彼と青山のAFLO MANIAで飲んだ。
それから19年程の歳月が過ぎている。

彼は印度へ渡った後、渋谷の店に戻って来なかった…数年経って風の便りで沖縄で店をやっていると聞いていた。
たまたま沖縄へ来る機会がなければそのまま会うこともなかったと思う。

前後するが彼と最後に別れた翌春、僕もタイ・ネパール・印度へと一人リュックを担いで出かけた。
彼をはじめ、僕の周りで印度!印度!となにやらざわめいていたこともある。部族の人たち、ビートの詩人、ミュージシャン崩れ、自称アーティスト、そんな周りの人々からアジア行きの手ほどきを受けていた。

荷物をできるだけ少なくし、バンコクのカオサンでは彼が勧めていたプロイゲストハウスに泊まった。彼から一人旅のコツのようなものを貰った、そんな気分で。

その旅で僕はすっかり印度、ネパール、タイに魅惑され、翌年もまた足を運び、大学を卒業してからもまだまだ印度やネパールに魅せられていたのだけれども…


お客でいっぱいの店内、忙しそうにカウンターの中で料理を作る彼を眺めながら煙草を吹かしながら昔のことを考えていた。ゴウ君に19年振りに会って、特になにをしようと思っていたわけでもないのだけれど、なんとなく聞いてみたいなと思っていたことがある。

あの時期、大陸で、島々で何を見て感じていたのか。

それは、僕の見たものと同じなのか、それともどう違うのか。

数本の煙草が灰になっていく間、考えてみたけれど聞きはしなかった。
なんたって19年だ。
僕だって旅の途中で何を感じていたかなんて人に説明するほどには思い出せない。


酒が飲めない僕はビール一杯と煙草で長居してしまった。
彼の手が空いた折に少しづつ言葉を交わす。

「たぶん、水が合ったんだなぁ、此処は。」
期せずして彼がそう言った。

「そうだな。」と心の中で僕。

旅先での滞在も、この国での生活も、それは遊びや、仕事や、住む土地、友人などなど、合わないなぁと思うと僕もそこから次へと動いてしまう。


どんなに夢中になっても、合わないと感じてしまうことがある。
さして欲してたわけでもないが、長く続いているなにかがあったり。

店に来て楽しそうに談笑するお客さん、スタッフ達のかもし出す雰囲気。
彼の言う、

「たぶん」 と 「水が合った」 に「そうだな」と思える空気を感じた。

国際通り 沖縄三越裏 高良ビル1F CAFÉ JULY 食堂寿来 良い店です。


12/5~12/8の間、所属している治療院の行事参加で沖縄へ行ってきました。
治療の予約を受けられなかった皆さま、大変ご迷惑をお掛けいたしました。

今週はいつも以上に頑張って治療にあたらせて頂きます。
by fuji69fes | 2008-12-08 23:25 | more about ...
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