にわか登山者、富士山を貸し切る。
夏の終わり8月31日。
しんうらやす整骨院前朝5時出発。 9時過ぎには五合目を出発。 極寒の風雨の中、休み無く濡れネズミのまま進行。 どこまで登るのかな~?と先導者まかせのハイキング気分。 しかし、ペース早いなぁ。 だれも高山植物に目もくれないで進んでく。 台風11合の影響なのか、山の天気は上るごとに酷くなる。 景色などなにも見えないし、メガネに着く水滴をいちいち拭くのも無理がある。 モンテインのeVENTは思いのほかヤワでこの雨にはかなわないし、ゴアテックスの ダナーライトも然り。上級防水素材でも適わない天候ということか。 早くも7合目辺りで靴下が濡れはじめる。 富士登山ははじめて。 山に登ること自体、高尾山、陣馬山、岩殿山、ネパールの丘、他ハイキング・ ライトトレッキングレベル。 それでも、登れば登っただけ下りが辛いことは知っている。 僕の膝はあまり長持ちしない方だし、こんなに冷えた気候の中で休みなく暖も 取らずに歩き続けたことは無い。キツイ。 8合目の山小屋でお金を払ってトイレを使わせて頂く。 山小屋の人の話では登山ツアーはこの天候で全部中止とのこと。 この上は山小屋も閉まっているだろうし、下山されては?と。 正直、ここで終わりにして欲しかった僕は山小屋の人の言葉に内心激しく同意 していた。 せっかく来たんだから山頂までなどという気持ちは無くも無いが、視界悪く何も 見えない山なんて面白いはずもなく、この悪天候では思い出としてもネガティブ なものになりそうで。 若手のS先生がかなりきつそうな様子。 僕は手助けする余裕はない。 「皆大丈夫?どうする?」と院長。 僕は『下りたいなぁ』と言う。 しかしS先生は院長の『どうする?』の問いに『皆が行くなら最後まで行きます』と 驚愕の返事。 頂上を目指すことしか頭に無いヤツは困る。 『いやぁ、足上がってないじゃん。降りれないよそれじゃ(僕もだけど)』 8合目過ぎてからなんとなく足元がふらつくのは急勾配のせいか、それとも低酸 素のためか、判断はつかないまま僕の心臓は速く脈打ち、下から吹き上げる冷 たい雨に顔面が麻痺して喋ろうにも口が開ききらず言葉が発せない。 殆どの先生方はドンドン登って行く。 正直限界なのだけど、リーダーである院長には無視された。 他に登山者もいないのだから僕一人降りますといっても、その方が危険だ。 着いて行くしか自分を守る術が無い…もし倒れても助けを呼んでくれる他人がい る事の方が大切。 S先生とケツ持ちの院長に追い上げられるように9合目の岩場を四つ足で登る僕 は夏の終わりに木から剥がれ落ちる寸前、命の灯火消え行く手前のヒグラシのご とく見栄え悪い弱々しいものだったろう。(例えが長いな・・・) 止まると冷えが一層強く感じられ、動けなくなりそうで弱々しくも体を動かす他無か った。力入らない太腿、痺れて感覚が無い手指。 ちょっと本気で生命の危機を感じた。 ハイペースで登ったせいか頭痛こそしないが、高山病のようだった。 こんなにわか富士登山者がいるから事故が起きるし、登山愛好家に煙たがられる のだろう。 岩に張り付き一人反省してもどうにもならない。 かのネパールでは名峰を信仰の対象とし、神として称え、手を合わせる。 「山は神、人間が登るものでは無い」とし海外から遠征してきては神を汚すアルピ ニスト達を避難したと昔ポカラで聞いたことなど思い出す。 これじゃまるで走馬灯だ。 顔面蒼白(だったに違いない)で山頂まで辿り着くも5分も経たずに下山開始。 なにせ、皆下着も靴下も濡れ切っている。 視界は真っ白、足下の赤い土と岩しか見えないし、何しろ寒いから止まってなど いられない。体がどんどん冷えていく。低体温症というやつだと思う。 下山は8合目あたりからやはり膝が激しく痛み出す。 勾配がキツくなるとポールを持たない僕は一番最後に位置する他ない。 須走りの砂利は雨で多少固まっているようだけど時に容赦なく足を持って行かれ るのには閉口した。というより、思わず『うぅ~っ』とか呻きが口を付いた。 「もう2度と来ない」そう思いながらの下山道。 痛みを堪えながらも悪天候のせいでマイペースを保てず、それを一緒に動いてい る仲間達のせいにして内側からこみ上げるネガティブな想いに縋るように足を運 ぶ他なかった。弱さは隠せるものでは無い。 晴れているならそれぞれのペースで離散、合流すればよいのだけど悪天候で殆 ど貸し切り状態の富士山。 『先に行ってよ』と言えば一人力尽きたらそれまで。まわりに誰も居ない。 選択肢は無い。ただ着いて行くのみ。 かなり惨めだ。 快適指数の著しく異なる人間とは行動を同じくしないこと。 今回学んだ教訓です(笑) 要らない思い出を一つ作ってしまいました(笑) この思いを昇華するためにも次回は晴れの日の富士山ですかね? ね、先生方。 ※自戒のつもりでたいそう大変だったように記載しましたが患者さまでもあり 山岳会所属のベテランの方に同行していただきましたので危険には配慮し た登山でした(?)ことを記しておきます。 山での事故を防ぐためには個人個人の体調に応じた行動、現地の方のアド バイスにしっかり耳を傾けること、今回みたいに7時間程度で登って降りてな んて無茶です。
by fuji69fes
| 2009-09-01 23:18
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