電気痙攣療法

うつ病の治療に電気痙攣療法というのがある。


乱暴且つ簡単に言えば脳に電流を流すことで治療とする方法だ。

人間の体内、筋肉や神経は電気信号で動いているわけで、ショートさせるのか、リセットさ
せるのか、なんと表現したらよいかわからないが、一種のショック療法である。



僕の生業である鍼治療にしても皮膚上のある点に鍼を置くことで電気信号(神経伝達とし
よう)が脳に到達し、フィードバックされ患部の改善、自律神経への好影響、ひいては人体
が持つ自己治癒の力を引き出すわけで、体と言うのは未だ解明しきれないが精密な電気
回路を持っている。

そして、こ電気痙攣療法だが、投薬と一緒で何がどうやった仕組みで効果が出るのか、わ
かってはいない。

投薬治療もその仕組みはわかっていない?
実はそうらしい。

薬理効果については昨年から使用されているリフレクスがようやくプラセボ群と比較して
有効性が認められたとされている。
それまでの抗うつ剤、15年ほどまえに一大ブームとなったプロザック、それに続けと日
本で認可されたSSRI、SNRIなどはプラセボとの比較で有効性が認められていない。

つまり、僕がうつ病と言われる厄介な病と関わりを持ってからの20数年が経つわけだが、
うつ病の治療というのは確立されていないとも言えるし、事態は悪化している・・・
(いや社会が「知る」力を得たことで明るみに出てきた部分もあるだろう)


こういう表現は大嫌いなのだけど、この国のうつ病による損失、各企業における社員がう
つ病であることの損失、各家庭におけるうつ病の家族がいることの損失、つまり経済の話
だが、各報道で発表されている莫大な損失額というのは全部ではなく一部に過ぎないと思
う。


話は電気痙攣療法に戻る。


この電気痙攣療法を薦められたケース、それが身近に起きた。

ドクターの説明では当然ながら、利点と好ましくないかもしれない点が述べられ、患者・
その家族にYESorNOを選んでくれという。まあ、当たり前のやり取りではある。

しかし、電気痙攣である。やはり、恐ろしいイメージを抱く。
僕は一通りうつ病に関しては情報を得ているので「そう来たか・・・」とも思えるが実例は
それまで身近に存在しなかった。
家族、友人、知人、患者さん、うつ病といわれる方々とご縁あって20年以上。
うつ病とその病を持つ方々、そのご家族と関わりながらも今だかつて電気痙攣療法を受
けた人を知らないのだ。

だが、ここに来て・・・である。

「初めてのこと」というのは予備知識があっても、いや、あればこそか、不安と懐疑の念
は大きい。経験値がゼロなのだから。

大学病院のドクターが「この方法を薦めます」と言って来ても・・・

「電気痙攣療法で会社に復帰出来ました!
    おかげで所得も安定し家族を養っていけます!」

そんな嬉しい声を聞いたことがないのだ。
仮にそれほど効果的で安全なら5年、10年と通院・入院しているより医療費だって節約
出来るのではないか?


治療家仲間に聞いてもやはり「知らない、例を聞いたことが無い」と言う。
藁にも縋りたいが、藁一本落ちていないのか・・・そんな気になる。

そこに決断を迫られても何を頼りに判断すべきか。

治療っていうのは、「ご縁」であると思っているわけだが、今回のケースでは自分が治療
者でもなく、患者でもない。自分がどうこう言える立場でもない。


医療とは、治療とは、ある意味「大きな賭け」となってしまうのか。


そうあってはならないと自分を戒めつつ、今回のケースが上手く運んで良い結果をもたら
してくれることを願うほかない。
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by fuji69fes | 2010-06-29 23:53 | 治療室より
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